天空の城 熊野の赤木城跡が数倍楽しくなるポイントをご紹介
Update:
三重県熊野市にある観光スポット「赤木城跡」を知っていますか?築城の名手 藤堂高虎ゆかりの場所で、近年では天空の城と呼ばれる神秘的な景色に出会えるスポットとして注目されています。
今回、赤木城跡を巡るにあたって、観光PRボランティア「熊野市観光比丘尼(びくに)」の田中順子さん(以下、「田中さん」)に赤木城跡を楽しむポイントを教えてもらいました。
城跡ってどう巡ったら良いかわからないという人は特に必見!本記事を読めば、赤木城跡を十二分に楽しめるのはもちろん、これからの人生で城跡巡りを数倍楽しむことができること間違いなしです。ぜひ、最後まで記事を御覧ください。
築城の名手 藤堂高虎の原点は熊野にあり 赤木城跡の歴史
まずは、赤木城の歴史について少し触れていきましょう。1585年に豊臣政権が木材の産地であった紀州に侵攻をしました。木材を運び出す流通の要であったのが十津川街道や北山街道です。一説によると街道を監視するためのお城として、1589年に武将 藤堂高虎が赤木城を築城したとされています。
-田中さん「藤堂高虎は自ら出向くタイプの人だったようで、城の縄張りも担っていたんです。」
縄張りと聞くと、一般的にはテリトリーや陣地というような意味に受け取ります。一方でお城の縄張りとは、設計のことを指します。主郭の場所や各区画の配置、石垣の高さ、敵が攻めてきた際にどのように城を防衛するか…それらを具体的にどのように細かく設計していくか。築城の名手と評される、藤堂高虎の得意分野でした。
赤木城は自らが縄張り(設計)を担った藤堂高虎の初期の城だった可能性が高く、城跡にはそんな痕跡が残っています。
赤木城を築城して以降、1602年には今治城を築城、1605年には江戸城の縄張りを担い、1611年には津城の築城や伊賀上野城の改修をしました。享年75(1630年)で没するまで、築城の名手として数々の実績を残しています。
赤木城跡巡りのポイントは「石垣と攻め手・守り手の目線」
歴史や藤堂高虎の築城技術に少し思いを馳せたところで、赤木城跡を巡って行きます。
-田中さん「石垣と城跡は攻め手と守り手の目線で見ていくと、楽しいですよ。」
赤木城跡巡りは、まさにこの一言を押さえておくことがポイントです。石垣に目を向けながら、登る時は城を落としてやるぞ!という攻め手の気持ちで、上から下を眺める際は城の守り手の気持ちになって、散策していきましょう。
自然石で長持ち!石積みの技術にご注目「野面積み(のづらづみ)と算木積み(さんぎづみ)」
城跡巡りで、まず最初に目を向けるのは石垣です。
赤木城の石垣は中世で主流の自然石を使った野面積みで、主郭の四隅は近世で主流となる算木積みをしています(上の写真をご覧ください)。算木積みは、そろばんが普及する前に使われていた細長い棒「算木」のように長短に加工した石を使いますが、赤木城跡では自然の石を使っています。赤木城跡では、中世城郭と近世城郭の両方の特徴を備えた貴重な石垣の姿を、間近で眺めることができます。
石垣に隙間が目立つのはなぜ?雨水を抜く知恵に脱帽
また、赤木城跡の石垣に近づくと、至るところに隙間があることに気づきます。実はこの隙間は、熊野の地で最も長持ちする石垣づくりの特徴です。
熊野はとても雨の多い地域のため、強固な自然石を大小に組み合わせることで雨水をうまく抜く工夫が施されています。まさに自然のパズルからは、400年以上の歴史を感じること間違いなしです。
攻め手の気持ちになるとわかる…守り手が有利な城の構造
丘にある赤木城跡の散策を開始してすぐに感じたのは、視界の狭さです。本当にこの先に城跡があるのかな?と疑ってしまいます。道も狭くて、何だか登りにくい。視線は自ずと上を見上げていて、攻め手の目線で見ると、いつどこから敵が攻撃してきてもおかしくない状況です。
上に登ってみると景色が一変します。なるほど、守り手の目線に立ってみると、どこからでも敵の頭上に矢を放つことができそうです。
第一の門があった場所には、門柱を支えた礎石(そせき)が両サイドに残っています。急な坂を登ってきて曲がり角に門とは、攻め手からすれば「おのれぇ…」という気持ちになりそうです。
城郭の出口である「虎口(こぐち)」は、攻め手を防ぐための工夫に富んでいます。
-田中さん「攻め手は勢いで一直線に走りこみたい。そうはさせないよう、うまく虎口を配置するのです。」
一直線に走り込めないように、道を何重にも曲げていたり、急斜面で落ちやすくしたり、敵が入り込める両側を少し高くして矢で攻撃しやすくしたり。 赤木城の虎口は四角い桝形をしていて、誘い込まれた敵を仕留めるための罠が仕掛けられていました。どうしたら虎口を突破できるのか、そもそも虎口には近づかない方が良いのか、攻め手目線でぜひ攻略してみてください。
権威の象徴「鑑石(かがみいし)」に威圧される
石垣の中に一際目立つ、大きな石があります。鑑石と呼ばれるこの巨石には、城主の権威を示し、攻めてきた敵を威圧する目的があります。
疲弊しながら登ってきた攻め手の気持ちになって鑑石を見てみましょう。このような大きな石をどのように持ってきたのか、このまま攻めて我々は勝てるのだろうか…と弱気になってしまいそうですよね。
主郭で街道を見渡していた当時に思いを馳せる
赤木城跡の主郭は城下から約30mの高さにあります。一番高い場所ということもあり、とても見晴らしが良く清々しい気持ちになります。
当時は木々が茂っていないと考えると、主郭からは木材を運び出す街道がよく見渡せたことでしょう。
主郭を防衛する「犬走りと横矢掛り」
主郭を取り囲む石垣の横には、小さな小道が続いています。敵を犬のように走らせるための道として「犬走り」という名がついています。
石垣の外の通路は「犬走り」、石垣の中の通路は「武者走り」と呼び、敵を犬扱いするという皮肉がネーミングに込められています。
-田中さん「ここを曲がったら絶対に敵がいる!と思いませんか?」
確かに、あの壁の向こうに敵がいそうです。犬走りを進むと、ニョキッと突き出た石垣は「横矢掛り」と呼ばれています。
攻め手は出っ張りから側面を矢で撃たれ、さらに壁にも敵がいる。守り手は横矢掛りから、二方向に矢を放つことができます。赤木城において、主郭の防衛機能がとても高いことを見せつけられました。赤木城跡は想像していた以上に奥が深いです。
天空の城を拝むポイント 訪れる時期と幸運が必要
撮影者 小林良美
赤木城跡は別名「熊野のマチュピチュ」と呼ばれています。霧に包み込まれた赤木城跡は、とても神秘的で、一度は見てみたい景色です。
訪問時は霧一つない美しい景色でした(笑
しかし、天空の城に遭遇できるのは幸運の持ち主か赤木城に粘り強く通い続ける覚悟のある人のみです。おそらく、10月〜3月の間の午前8時〜で、夜間と日中の寒暖差が大きい日がポイントでしょう。
撮影者 小林良美
赤木城跡にはライブカメラが設置されています。天空の城を拝む確率をあげるための手段として、ライブカメラをご活用ください。赤木城跡のライブカメラリンクはこちらから。
春は3種の桜を観賞できる名スポットに!
赤木城跡は桜の観賞スポットとしても人気です。クマノザクラ、ソメイヨシノ、山桜の順に春の訪れを楽しめます。また、秋にはドウダンツツジが赤木城跡を彩りますよ。
赤木城跡と合わせ訪れたい3つの関連スポット
せっかく赤木城跡を訪れたならば、押さえておきたい関連スポットが
- 丸山千枚田(まるやませんまいだ)
- 道の駅 熊野・板屋九郎兵衛の里(みちのえき くまの・いたやくろべえのさと)
- 熊野市紀和鉱山資料館(くまのしきわこうざんしりょうかん)
の3つです。それぞれ順番にご紹介します。
歴史ある棚田に石垣あり「丸山千枚田」
赤木城跡から車で約9分のところに、日本の棚田百選に選ばれた「丸山千枚田」があります。注目ポイントは赤木城跡同様に400年以上の歴史を刻んだ石垣が残っていること。人の手で積み上げられた石垣技術が、現在の丸山千枚田の景色を繋げている。そう思うと、見えてくる景色はより感慨深いものになりますよ。見事な棚田を眺めながら、丸山千枚田の石垣にも、ぜひ目を向けてみてください。
●丸山千枚田情報
住所 | 三重県熊野市紀和町丸山 |
電話番号 | 0597-97-1113(熊野市地域振興課 |
駐車場 | 無料駐車場あり |
公共交通でのアクセス | JR熊野市駅から車で約30分 |
車でのアクセス | 熊野大泊ICから車で約40分 |
続日本100名城スタンプはココにあり「道の駅 熊野・板屋九郎兵衛の里」
続日本100名城スタンプがあるのは「道の駅 熊野・板屋九郎兵衛(いたやくろべえ)の里」です。赤木城跡から車で約10分でアクセスできます。
御城印も販売されています。
また、「道の駅 熊野・板屋九郎兵衛の里」では、熊野地鶏を使った食事処で食事や、熊野の特産品などを扱う売店でお買い物ができますよ。
●道の駅 熊野・板屋九郎兵衛の里情報
住所 | 三重県熊野市紀和町板屋82 |
電話番号 | 0597-97-0968 |
営業時間 | 売店:平日 10:00~16:00、土日祝日 10:00~17:00 食事・軽食:11:00~14:00 |
休業日 | 毎月第2・3火曜日(8月除く) |
駐車場 | 普通車43台、大型バス3台 |
公共交通での アクセス |
JR熊野市駅から熊野古道瀞流荘線で約40分、板屋バス停で下車 |
車でのアクセス | 熊野大泊ICより国道42号、国道311号経由で約35分 |
備考 | EV充電施設 有(1台分) |
赤木城跡の出土物や模型、専門員コラムも必見!「紀和鉱山資料館」
赤木城跡から車で約11分(道の駅 熊野・板屋九郎兵衛の里のお隣)にあるのが、紀和鉱山資料館です。ここでは、赤木城跡から出土した「炮烙(ほうろく)」や「天目茶碗(てんもくぢゃわん)」などが展示されています。
また、赤木城跡の1/250模型展示がありますので、散策後に眺めるとより構造を理解できます。さらに紀和鉱山資料館の名物専門員 堀さんの藤堂高虎コラムも要チェック。疑問が解消されたり、新たな着眼点を得られますので、おすすめです。
そして、紀和鉱山資料館の紀州鉱山の歴史や採掘に関する展示も必見です。赤木城跡に興味を持っている(持ってくれた)方は、きっとワクワクが止まらなくなりますよ。
●紀和鉱山資料館情報
住所 | 三重県熊野市紀和町板屋110-1 |
電話番号 | 0597-97-1000 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
休業日 | 月曜日(月曜が祝日の場合、翌日が休館)、12/29~1/3休館 |
料金 | 大人310円、小中学生100円、 団体料金 20名以上 一般150円、小中学生50円、 身体障害者の方及び付き添いの方1名半額 |
駐車場 | 無料 約10台 |
公共交通での アクセス |
JR熊野市駅から熊野古道瀞流荘線で約40分、板屋バス亭下車 |
車でのアクセス | 大泊ICより国道42号、国道311号経由で約35分 |
城跡巡りの奥深さを学べるスポット 赤木城跡!
やられる!と感じた人は城跡巡りを楽しめる素質あり
いかがでしたか?
赤木城跡を訪れれば、これまで見えてなかった城跡巡りの面白さに気づくことができます。本記事のポイントを押さえて、ぜひ赤木城跡に出かけてみてください。
赤木城跡の情報まとめ
住所 | 三重県熊野市紀和町赤木 |
駐車場 | 無料 約30台 |
トイレ | あり |
公共交通での アクセス |
JR紀勢本線「熊野市駅」から車で約35分 ※熊野市駅周辺にレンタカー屋1軒 |
備考 | 飲料の自動販売機あり、階段手前に貸出用の杖あり |
赤木城跡のトイレ
赤木城跡近くの自動販売機
赤木城跡の入口に設置された杖
(ライター:濱地 雄一朗 さん)