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熊野古道ファン必見!八鬼山で出会う“険しさと美しさ”の共演

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Owase City

八鬼山越えとは ― 熊野詣の難所

三重県尾鷲市。八鬼山越えは、熊野古道伊勢路の中間よりやや南に位置する道で、世界遺産や近畿自然歩道、「歴史の道百選」等に登録されています。主に江戸時代、伊勢神宮と熊野三山を結ぶ参詣道として、また地元の生活道として多くの人々が越えました。
かつては山賊やオオカミが出没し急な登りが続くことから「西国一の難所」とも言われましたが、その分、熊野古道の趣が色濃く感じられる場所です。

尾鷲節歌碑  登り口より約450m手前に立つ石碑。悲恋を歌う尾鷲節の一節「ままになるならあの八鬼山を鍬でならして通わせる」と刻まれています。

向井側登り口駐車場とトイレ  登り口の前に駐車場とトイレが整備されています。

八鬼山向井側登り口  熊野古道伊勢路の道標が旅のはじまりを告げます。

 

実際に歩いてみた ― 石畳と森林が語る時の流れ

私が訪れたのは令和7年晩秋。大曽根浦駅からスタートし、向井(北)側から三木里(南)側へ越えました。JR大曽根浦駅から登山口までは徒歩約30分です。最初の数百メートルは緩やかですが、すぐに息が上がるほどの急坂が続きます。江戸時代の旅人たちもこの坂を草鞋(わらじ)で登ったのかと思うと、自然と背筋が伸びました。

100m道標  登り口から100m毎に設置されています。峠を越えた三木里側の最後が63番。歩行の目印だけでなく、峠名と番号を伝えると救助活動が迅速に行われます。

苔むした石畳道  端正な石畳は、江戸時代に整備されたと伝わります。当時の旅人の姿が思い浮かびます。

ゴットン石  わずかに浮いていて、踏めばゴットンと鳴ります。約18ⅿ手前に案内板がありますので、探してみてください。

七曲り  八鬼山の中腹にある大難所が「七曲り」道標20番から勾配のきつい石畳道が280ⅿ約15分続きますが落ち着いて進みましょう。

町石  丁石とも書きます。天正年間(1573~1591年)、伊勢の御師などにより奉納された地蔵尊が今も静かに佇んでいます。山の北面のみにあり、1町(109m)毎に50基設置されていたと考えられますが、現在は37基残っています。写真の七曲りの上の地蔵尊は、舌を出しているように見えることから「ベロ出し地蔵」と呼ばれています。

九木峠  標高520m  道標31番が立っていて、尾鷲トレイル、九鬼地区へ行く九木道、山頂を経由して三木里地区へ行く道に分かれています。右側の荒神堂・山頂方面へ進みましょう。

九木峠までには、他にも「行き倒れ巡礼供養碑」や「籠立場」「清順上人供養碑」「八鬼山桜茶屋一里塚」「蓮華石」「烏帽子石」など、歴史を感じさせるポイントがいくつもあります。

歴史スポット ― 荒神堂

大宝2年(702年)、修験者による創基と伝えられ、西国三十三所第一番札所の前札所として、かつて多くの巡礼者が訪れました。この地は嘉永元年(1848年)に刊行された『西国三十三所名所図会』にも「八鬼山嶺 荒神茶屋」として紹介されています。茶屋は昭和初期まで開いていました。ここで休んで、山頂に挑みましょう。

荒神堂  スタンプ台やトイレも設置されています。

 

達成感を実感!― 八鬼山山頂

八鬼山の山頂では、景色は望めませんが、大きな石があります。古道から少し道が分かれますが、約10mなのでぜひ立ち寄ってください。

三木峠茶屋跡前分岐  ここを直進すると明治道だが、未整備のため通行止めとされています。左折して世界遺産登録されている江戸道を進みましょう。

山頂手前分岐  分岐から頂上まで約10mです。

八鬼山山頂  標高647m  1歩1歩進んできた達成感をここで感じてください。

 

絶景スポット ― 熊野灘を望む天空の展望台

八鬼山頂上近くにある桜の森広場の展望台からの眺めは、「地球は丸い!!」と叫びたくなる景色。
眼下に広がる九鬼湾と熊野灘、遠くに続く水平線。

桜の森広場分岐  直進すると江戸道ですが、まずは絶景スポットの桜の森広場へ寄りましょう。道標40番はこの分岐を直進したところにあります。

桜の森広場  向井側登り口からおおよそ2時間半~3時間。広場に出て、空と海の青色が見えます。――その瞬間、すべての疲れが吹き飛びました。

桜の森広場眺望  九鬼湾と熊野灘、天気が良ければ志摩半島から那智山まで望めます。

歴史スポット ― 十五郎茶屋

『西国三十三所名所図会』にも描かれている茶屋で、当時はサルが飼われていたようです。この茶屋から先の下り道は特に急坂となっています。紀州の殿様が通行する「御成」行列のときでさえ、お供の者は「槍を担いで登ってもよい」とされたらしく、「槍かたげ」と呼ばれている難所です。

十五郎茶屋  東屋や道標52番が立っています。

 

余韻を楽しむ ― 八鬼山南麓からビーチへ

八鬼山を麓まで下ると、登り口から三木里駅まで歩く場合は約1時間です。透明な水の流れる川、猪垣の道、美しいビーチ、風情ある三木里地区を楽しみながら歩きましょう。

名柄の曲がり角  熊野古道は左折、名柄一里塚やトイレがあります。

名柄の猪垣  名柄地区の古道沿いはイノシシから田畑を守る猪垣沿いを歩きます。

三木里ビーチ  広くて美しい海岸。夏は海水浴場として賑わいます。

 

アクセスと登山情報

「西国一の難所」と呼ばれた道です。しっかりとした計画と準備をお願いします。
今回の実地踏査では、JR三木里駅に駐車して上り列車に乗り、JR大曽根浦駅から歩いて八鬼山を越え、JR三木里駅まで歩きました。
他の例として、向井側登り口前に駐車して、八鬼山を越えてJR三木里駅まで歩き、列車を利用して車まで戻る方法もありますが、列車の本数は少ないので時間をよく調べてください。
これらの駅は無人駅でワンマン列車です。乗り方ですが、乗車口は1両目の後ろのドアとなります。ドア横のランプが点灯したらボタンを押してドアを開け、乗車してすぐ整理券を取ります。そして、 1両目の前のドアから 降車しますが、降車する前に整理券と運賃を運賃箱に入れて支払います。ICカードは使えないので現金が必要です。

・コースタイム:約10km   5時間50分(熊野古道センター〜三木里駅)
※夕方、特に晩秋から冬は早くから薄暗くなります。
・難易度:健脚向け
・装備:トレッキングシューズ・雨具・熊鈴・食料・飲み物・ライトなど
・トイレ:登山口と荒神堂にあり

※アクセスについて詳しくはこちらのリンクへ
https://kumanokodo-iseji.jp/kumanokodo-iseji/root6/

※ツキノワグマの出没について 三重県の発表をご確認ください。
https://www.pref.mie.lg.jp/JTAISAKU/HP/m0114900048.htm

 

情報収集と理解を深めるために― 三重県立熊野古道センター

八鬼山近くに三重県立熊野古道センターがあります。産業や生物など熊野古道全体のことを理解できる展示がされています。楽しく学べるおすすめの施設です。

所在地:〒519-3625 三重県尾鷲市向井12-4
TEL:0597-25-2666
休館日:12月31日、1月1日(その他メンテナンス等により休館の場合あり)
開館時間:午前9時から午後5時まで

三重県立熊野古道センター  右側が展示棟、左側が交流棟

まとめ ― “険しさ”の中にある、心の静けさ

八鬼山越えを歩いて感じたのは、単なる登山道ではなく、“祈りの道”だということ。
熊野古道の他の道とはまた違う、静寂と厳しさ、そして圧倒的な海の眺望。
険しい坂道を一歩一歩と歩く時間は、まるで過去と現在を行き来するような不思議な感覚でした。八鬼山越えは、きっとあなたの心に残る旅になります。