熊野古道エリア・東紀州を自転車で横断してみた[前編] ― 熊野古道を感じる自転車旅
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紀北町
尾鷲市
熊野市
もっと早く自転車に乗るつもりだった。
東紀州の夏は暑い。とにかく暑い。
これはもう、「気合でどうにかする」類の暑さではない。
だから秋になったら走ろう。
そう思っていた。
……その結果が、12月27日である。
少々言い訳めいた書き出しになりましたが、タイトルにある通り、
熊野古道エリア・東紀州を自転車で横断する自転車ライドに出てきました。
私と自転車について
私が自転車にハマり始めたのは、2010年ごろです。
本格的に乗っていた時期には、1日100km、調子が良ければ200kmほど走ることもある、いわゆる自転車バカでした。
しかし環境が変わり、次第に自転車から距離ができ、
気づけば年に数回乗るかどうか、という生活に。
その結果、みるみる増える体重。
(それだけではありません。東紀州の食べ物が、美味しすぎるのです。)
そろそろ本気で腰を上げなければ――と、物理的にも重い腰を上げるのでした。
計画と不安
計画自体はシンプルです。
紀北町・紀伊長島駅をスタートし、紀宝町・鵜殿駅まで、なるべく海沿いを通るルート。
距離にして、およそ100km。
以前の自分であれば、「余裕」とまでは言わずとも、許容範囲だったはずです。
……が、ブランクが長すぎました。
調べてみると、100kmを超える走行は、実に7年近くしていません。
加えて、東紀州といえばリアス海岸。
細かく、そして確実に脚を削ってくるアップダウンの連続です。
そんな楽しみと不安を胸に、
紀伊長島をスタートするのでした。

紀北エリア|え?最初からこんなに大変だったかな
家族に送ってもらう都合もあり、スタートは9時30分ごろ。
少し遅めの出発となりました。
走り始めてすぐ、近くで「年末恒例・きいながしま港市」が開催されているのを発見。
せっかくなので、少し立ち寄ることにします。
会場は大変な賑わい。
本当は何か食べていきたかったのですが、スタートしたばかりで先も長い。
ここはぐっと自重しました。
……ただ、その判断が、この日「美味しいものを食べ損ねる」結果になるとは、この時はまだ知る由もありません。
港市を後にし、すぐ近くの江ノ浦大橋へ。
通称「アルファ橋」とも呼ばれているこの橋は、一度自転車で走ってみたかった場所です。
少し登って、写真を一枚。

先は長いので、再び走り出します。
県道長島港古里線で古里まで向かいます。
海野漁港のある集落を過ぎたあたりから、
「ん?こんなに登ったかな?」
と思うような坂が現れ始めます。
ふと周囲を見ると、近くには熊野古道・一石峠(南側)平方峠の登り口。
なるほど、と妙に納得しました。
峠を越えて古里の集落へ。
ここもまた、思わず足を止めたくなる景色が広がっていました。
国道42号線に入り、尾鷲市方面にペダルを回します。
紀北町内のトンネルは、車道用と歩道用が分かれているトンネルが多く比較的安心。
正直、長いトンネルは今でも苦手なので、これは本当に助かります。
ほどほど……と言いたいところですが、
アップダウンを繰り返すうちに、じわじわと脚にダメージが溜まっていくのを感じていました。
「前半から、あまり動けていないな」
そんなことを考えながら走り、相賀・海山エリアに到着したのは11時ごろ。
コンビニで小休止し、軽く補給をします。
休んでいると、地元の方から声をかけられ、少し立ち話。
他県から移住してきたことを話すと、とても喜んで話を聞いてくれました。
こういう何気ないやりとりがあるのも、東紀州を走る楽しさのひとつです。
ここから、最初の難所・馬越峠へ。
その前に、道の駅「海山」でトイレ休憩を挟みます。
ここにはバイクラックもあり、自転車乗りにやさしい道の駅です。
さて、いよいよ最初の難関。
すでにそれなりにダメージはありますが、まだ走行距離は20km少々。
先は、長い。
熊野古道・馬越峠の入り口を横目に、国道の登りへ入っていきます。
実はこれが、意外なことに比較的楽に登れてしまいました。
「あれ?思っていたほど大変じゃないな」
というのが、正直な感想です。
やがて尾鷲トンネルが見え、尾鷲エリアへと入っていきます。
尾鷲エリア|最大の難関だと思っていた、八鬼山峠越え
トンネルを抜け尾鷲エリアへ。
気持ち良くダウンヒルを降りて行きます。
この時だけは登った甲斐がありますね。
時間的には尾鷲でご飯を食べたかったのですが、この後の登坂を考えて通過することに。
国道から少し市内に入り尾鷲港にたどり着いたところ少し荒れていましたね。
次は、42号線から311号線に入り九鬼方面に向かいます。
本来であれば、中井浦九鬼線という県道を走っていきたいのですが、最近の報道にあるようクマの心配があったので安全策を選択しました。
過去に通ったことがあるのですが、なかなか走りごたえがあり、景色も綺麗な場所がある面白いコースです。
私としてはトンネルを通らないコースなので本当はそちらをチョイスしたかったです。
やはりですね、八鬼山トンネルに向かうのはとてもとても、しんどくて参りました。
そして八鬼山トンネル。長い怖い暗いと、やはりあの長い距離(2.3km)のトンネルは自転車乗りにとっては怖さがあります。途中、立ち止まり車をやり過ごしながら通過しました。
もちろん反射板やバックライトなどもつけていますが、もしドライバーさんが見落としたらという恐怖にかられます。
ドライバーの皆さんどうぞ、気をつけて運転ください。
登ったので再び、長いダウンヒルを下って行きます。
時間もないので九鬼町は寄らずさらに西を目指します。
ここでも登りとなります。よく見かけるのですが稀に道路に飛び出している植物があります。
中には棘のある植物も多いので皆さん走行には気をつけてください。
九鬼から三木浦までの峠道を越えて行きます。
トンネルを二つ越え、下っていくと三木浦の集落が見えてきます。
ここは本当に絶景で、自転車で下っていくと空を飛んでいる気分です。
以前、ドライブスポットでも紹介した場所になります。

私はこの周辺に住んでいるので、このまま帰りたいのをグッと抑えてさらに進みます。
三木里で少し休憩してから、出発すると古江町に行く途中には熊野古道の三木峠の入り口がありますね。
そのまま通過して、賀田へ。
熊野古道の羽後峠の西側入り口近くに「みのや製菓」さんがあります。
おさすりと言う、柏餅に似たお菓子があるのですが、そちらを買おうと思い店内へ。
残念ながら桜饅頭しかなく購入し補給。
この後の急なアップダウンが続く道に備えます。
実はこの段階で結構脚に来ていて、参っていました。
距離にして54kmようやく半分です。
とはいえ、体感的にはすでにそれ以上走った気分でした。
時間は14時ごろ。
少しずつ、時間的にも余裕がなくなってきているのを感じます。

曽根町を通り過ぎ、比較的長い曽根トンネルへ。
さらに梶賀町を横目に進んでいきます。
このあたりも記録を見返すと、なかなか登りがきつかった区間でした。
そして、この先は本当に山道が続きます。
道幅も次第に細くなり、
「ここから先は、また雰囲気が変わるな」
そんな感覚がありました。
気づけば、集落の間隔も広がり、車の数も減っていきます。
景色は相変わらず美しいのですが、どこか静かで、少し緊張感のある空気です。
このあたりから、いよいよ熊野市エリアへ。
地図上の境目というよりも、
「次のステージに入った」
そんな印象を受けました。

熊野市エリア|小刻みなアップダウンに、時間も体力も削られていく
ようやく熊野市エリアに入ります。
ここからは、極端な登りこそありませんが、
短い登りと下りが、ひたすら繰り返されます。
体力もかなり落ちてきており、
このあたりからは景色を楽しむ余裕も少なく、黙々とペダルを回す時間が増えていきました。
甫母町を過ぎ、二木島へ。
ここでは季節外れの桜が花をつけていて、思わず目を奪われます。
ほんのひとときですが、その風景に少しだけ気持ちを癒されました。
ちなみに二木島には、太郎坂広場という休憩兼眺望スポットがあります。

遊木町を経由し、新鹿町に入ったあたりで、
この日のゴールを見直すことにします。
この時点で走行距離は71km。
大泊まで出てしまえば、あとはほぼ平坦なはずでした。
しかし、時刻はすでに15時を過ぎています。
この先には、まだ10kmほどのアップダウンが残っており、
暗くなる前に紀宝町まで走り切るのは現実的ではないと判断しました。

これは後半の高度を示したグラフですが、
あらためて見返しても、この区間のアップダウンは相当こたえています。
気持ちを切り替え、
せめて熊野市駅まで走ることにしました。
アップダウンがようやく落ち着くころ、
磯崎漁港の近くで、思わず足を止めたくなる場所に出ます。
特に名前がついているわけではありませんが、
夕暮れ時、このあたりの景色はおすすめです。
ここまでくれば、アップダウンはひとまず終了。
時間に余裕があれば鬼ヶ城にも寄りたかったのですが、
体力と時間を考え、熊野市駅へと直行しました。
熊野市駅に到着したのは、16時30分少し前。
時期的にも、かなりギリギリでした。
あと1時間早ければ、
この先は平坦なので無理をしてでも紀宝町まで行ったかもしれません。
ですが、この日はそこまで。
サイクルコンピューターを見ると、走行距離は80kmを超えていました。
走ってみての感想と振り返り
家族に連絡をして、熊野市駅まで迎えに来てもらいました。
通常であれば、土日には紀勢本線のサイクルトレインを利用して、自転車ごと最寄り駅まで戻ることもできます。
ただ、この日は年末ということもあり、そのあたりは自重することにしました。
(サイクルトレインは現在、実証実験中です)
あらためて振り返ると、
東紀州の沿岸部を自転車で走る魅力は、やはり「速度」にあると感じます。
車で走れば一瞬で通り過ぎてしまう景色も、
自転車であれば、風の向きや潮の匂い、集落の空気まで感じながら進むことができます。
今回のライドでは、事前に知っていたはずの道でも、
「あれ、こんな景色だったかな」と思う場面が何度もありました。
それが、この地域を自転車で走る面白さなのだと思います。
また、道中で地元の方と少し言葉を交わしたり、
熊野古道の入り口を横目に坂を登ったりと、
東紀州らしさをあらためて実感する時間にもなりました。
一方で、アップダウンの多さやトンネルの長さなど、
決して楽なルートではないことも再確認しました。
自転車にあまり乗り慣れていない方は、
無理をせず、サイクルトレインを上手に使いながら区間ごとに走るのがおすすめです。
紀北エリア(紀伊長島〜相賀)
比較的走りやすく、東紀州サイクリングの入門編としておすすめの区間です。
海沿いの集落や漁港を眺めながら、のんびりと走ることができます。
紀伊長島から相賀までは距離も短めで、
体力に不安がある方でも無理なく楽しめるルートです。
帰りは相賀駅からサイクルトレインを利用するのもひとつ。
矢口浦のほうを回るルートを組み合わせると、より東紀州らしい景色を味わえます。
尾鷲エリア(尾鷲〜九鬼・賀田)
走りごたえを求めるなら、このエリア。
アップダウンは多いですが、その分、峠を越えた先の景色は格別です。
九鬼や三木浦方面へ下っていく道は、
自転車で走ると空を飛んでいるような感覚になります。
トンネルが気になる方は、体力や時間に余裕を持った計画がおすすめ。
サイクルトレインを組み合わせて、九鬼から賀田方面を走るルートも面白いと思います。
熊野エリア(二木島〜熊野市)
静かに、じわじわと脚にくるのが熊野エリア。
極端な峠はありませんが、小刻みなアップダウンが続きます。
二木島周辺には太郎坂広場などの眺望スポットもあり、
少し足を止めて景色を楽しみながら走るのがおすすめです。
鬼ヶ城を経由して熊野市駅へ向かうルートは、
距離と時間に余裕がある日に、ぜひ走ってほしいコースです。
今回、東紀州を一気に横断しようとしてみて、正直なところ、計画通りにはいきませんでした。
時間と体力の配分、そして想像以上のアップダウン。
紀宝町までは届かず、熊野市駅での終了となりました。
ですが、走ってみて強く感じたのは、
この結果は「失敗」というよりも、東紀州という土地をあらためて知るための一日だった、ということです。
リアス海岸の細かな起伏、集落ごとに変わる空気。
そして道中では、熊野古道の峠が今も身近な場所に残っていることを、走りながら何度も意識することになりました。
地図で見るのと、実際に走るのとでは、受ける印象はまったく違います。
今回は時間に追われる形になり、
立ち寄れなかった場所や、通り過ぎてしまった景色も多くありました。
残りは、熊野市駅から紀宝町までのおよそ20km。
距離としては短く、地形も比較的平坦な区間です。
ただ、この日は時間と体力の関係もあり、
そこまで走り切ることはできませんでした。
その続きは、近日中にあらためて走りに行き、後編としてまとめる予定です。
まずは、残り20kmを走り切り、帰りながら気になっていた場所をいくつか巡ってみたいと思います。
今回のコース
